交通事故問題を弁護士に相談すべき理由と慰謝料増額のしくみ
たとえば、パソコンやスマホのアプリ使用規約。
電化製品の説明書。クレジットカードの約款。
細かい文字で、びっしりと書かれてありますよね。
あれらに最後まできちんと目を通している人は、決して多くないでしょう。
しかし、それが交通事故の慰謝料を決める書類や保険会社との交渉であれば、契約書の文言を読まずにいることはできません。
細々とした取り決めの一つ一つをきちんと確認しないと、思わぬ落とし穴にハマってしまうこともあるからです。
「でも、自分が交通事故になんて遭うわけがないから」
多くの方がそう思い込んでいます。事故に巻き込まれるまでは。
交通事故の発生件数は、2018年の3月だけに限っても37,806件。
毎日毎日、平均1,220件の交通事故が起きているのです。
宝くじに高額当選するよりは、交通事故に遭う可能性のほうが圧倒的に高いのですね。
交通事故による直接的な被害も問題ですが、厄介なのがその後のやり取り。
慰謝料額の交渉や、保険金の支払手続きなどを進めていかねばなりません。
しかし、慰謝料額の交渉は、少なくとも家電の価格交渉よりは遥かに難しいものでしょう。
また、保険会社が示してきた契約書を正確に理解するには、アプリの使用規約やクレカの約款を読み込むのと同じくらいの根気が必要です。
「相手から示された慰謝料の額は本当に適切なものなのか?」
「なんとなく首や手首が痛いような気がするけれど、治療費はどうなるの?」
「一応は治ったと思うけれど、後から痛みが出たらどうしよう……」
交通事故の被害者という立場に置かれた場合、どのように振る舞えばいいのか。
当サイトでは、それらの悩みを解決するための解答を示しております。
目次
1.交通事故を弁護士に相談した方が良いのはなぜ?
(1)相談先の候補は?
自分が交通事故を起こした場合。あるいは、他者の起こした事故に巻き込まれた場合。
まずは誰に相談すべきかが問題となります。
①警察
真っ先に考えられるのは、警察でしょう。警察はひき逃げやその他の交通事故の被害者相談を受け付けています。また、子供の被害者に対するカウンセリングに対応しているところもあります。
しかし、警察の役割は主に事件の解決です。
ひき逃げ犯を捕まえたり、罰金や免許の取消・停止処分を科したりするための捜査は行いますが、個別の交通事故について、被害者と加害者のやり取りには原則として介入しません。
②保険会社
次に考えられるのは、保険会社でしょうか。
自分も相手方も、事故に備えて自賠責などを始めとする種々の保険に加入しているはずです。
もちろん、最終的には保険会社への連絡はすることになりますが、交通事故の被害者である貴方の心強い味方となってくれるかどうかはまた別の話です。これについては、後ほどご説明します。
③弁護士
さらに考えられるのが、弁護士です。
弁護士というと、「裁判において、法廷で争うために依頼するもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。
ですが、必ずしもそうではないのです。
(2)交通事故問題と弁護士の役割
交通事故問題に関して、弁護士は具体的に何をしてくれるのでしょうか?
以下が、弁護士の取り扱える主な事柄です。
- 慰謝料や損害賠償の増額交渉
- 刑事裁判への被害者側代理人としての参加
- 損害賠償額などの相場についての助言
- 加害者(加害者側の保険会社)との示談交渉
- 自分の契約していた保険会社との交渉
これらについて、さらに詳しくみていきましょう。
(3)弁護士に依頼するメリット
①刑事裁判への参加
まず、交通事故における刑事裁判というのは、交通犯罪を行った者に対し、国家が秩序維持の観点から刑罰を科すための裁判です。これは、被害者と加害者の関係を問題とする民事裁判とは別の仕組みです。
この刑事裁判においては、国(検察)と加害者との関係が問題となり、原則として被害者は直接の関わりを持ちません。しかし、被害者の心情を汲み取るため、被害者参加制度というものが設けられています。
弁護士はそこへ代理人として参加し、意見を申述することができます。
②損害賠償額の相場の助言
交通事故の損害賠償額や慰謝料の額というのは、一律に決まっているものではありません。事故の態様や状況、お互いの過失の割合などによって決まるものです。また、後述するように賠償額の基準も異なってきます。
弁護士は交通事件も数多く取り扱っていますから、それぞれの事故の態様などを聞けば、どのくらいの損害賠償や慰謝料を得られるかという見通しが立てられます。
それに基づき、慰謝料や損害賠償の増額されるケースがあります。
③相手方や保険会社との示談・交渉
弁護士は、繊細さの求められる示談交渉や保険会社との煩わしい交渉を引き受けてくれます。
特に、怪我などの肉体的損害を負っている場合、自分だけで示談や交渉の場に立つのは辛いものがあるでしょう。そうした負担の軽減や肩代わりも弁護士の重要な役割の一つです。
示談交渉については、次の項目で具体的にみていきましょう。
2.示談交渉なども弁護士が対応してくれるの?
(1)示談交渉をできるのは誰か
交通事故の被害者として、加害者側(加害者本人・保険会社)と示談交渉をするという場合、注意しておかなければならないことがあります。それは、弁護士法72条という法律の存在です。
弁護士法72条では、弁護士・弁護士法人以外の者が報酬目的で法律事務の取り扱いや周旋を行うことを禁じています。この「法律事務」には、交通事故の相手方との示談交渉も含まれると裁判例にあります。
つまり、本人もしくは弁護士・弁護士法人以外の者が、有償で示談交渉を行うのは違法なのです(一部の保険に関しては保険会社も代行可能)。
したがって示談交渉を行いたければ、自分自身で行うか、弁護士に依頼するのが基本です。
ただ、無償であれば示談の代行を頼むことも一応可能ではありますが、非常に場合が限られているでしょう。
(2)弁護士による示談交渉の特長
弁護士はプロフェッショナルですから、損害賠償額や慰謝料額の相場を熟知しています。
法律の条文だけであれば誰にでも確認できますが、非専門家と比べた場合にもっとも差が生じるのは、この経験に基づく知識なのです。
相場を知っているということは、保険会社の示してきた額が妥当かどうかも判断できるということです。
保険会社はビジネスですから、なるべく支払う金額を低く抑えようとします。
そこで弁護士が示談交渉を行うことにより、得られる金額の増額が見込めるというのが特長です。
3.自身が加入する保険会社に相談してもダメなの?
(1)保険会社は味方なのか
交通事故の際には、被害者である自分と加害者である相手方の他に、双方の契約している保険会社も関わってきます。
相手方の保険会社が自分とは対立する関係にあるのはともかくとして、自身が加入する保険会社はどのような立ち位置にあるのでしょう。保険会社にとって、自分は保険金を支払っている、いわばお客様の立場にあります。
だとすると、自分の味方になってくれるのでしょうか。
残念ながら、そうとは限らないのが実態です。
(2)保険会社の利益構造
保険会社は営利企業ですから、どこかから利益を得る必要があります。この利益というのは、お客の支払う保険料から経費や保険金を差し引いた額です。
つまり、お客に支払う保険金が少なければ少ないほど、保険会社の利益は増えるという構造にあるわけです。
もちろん信用の問題もありますので、貴方の加入する保険会社が貴方を意図的に騙すようなことはしないでしょう。ですが、保険金の支払いという局面では、基本的に利害関係は対立しているといえます。
(3)賠償金の交渉
では、相手方の加入している保険会社と交渉し、より多くの賠償金を得られるようにしてくれるというのはどうでしょうか。
これも、上で挙げた弁護士法72条の関係上、原則として禁じられています。そもそも、保険会社の担当者は交通事故の賠償額やその算定の仕方について専門的な知識や経験を持ち合わせているわけでもないので、仮に交渉できたとしても満足する結果となるかどうかは疑問です。
保険会社の役割は、あくまでも「貴方の加入している保険プランのカバーする範囲に、今回の交通事故による損害が含まれているかどうか」の審査と、それに基づく支払いだけです。損害賠償や慰謝料の示談や交渉とは切り分けて考えなければなりません。
4.弁護士に依頼するとなぜ慰謝料が増額するの?
(1)慰謝料の額の決まり方
前提として、慰謝料(精神的損害の賠償金)というのは予め決まった金額があるわけではありません。
なぜなら、一口に交通事故と言っても、態様や状況、過失の割合などがそれぞれに異なり、それらの要素によって慰謝料の額も左右されるからです。
すると、きちんと主張や請求をしたかどうか、交渉をしたかどうかによって、慰謝料の額は変わってくるということになります。
(2)慰謝料額の算定基準
また、いくら個別具体的な事情によって慰謝料の額が変わるとはいえ、いい加減な丼勘定で金額が決まるわけではなく、算定基準というものがあります。
それには以下の3つがあります。
- 自賠責基準
- (任意)保険会社基準
- 裁判基準(弁護士基準)
自賠責基準とは、強制加入である自賠責保険による支払い額を基準とするものです。この範囲内であれば保険会社も自賠責によって支払いを受けられるため、出捐は少なくなります。
3つの基準の中では、もっとも低い基準です。
(任意)保険会社基準とは、各人が任意で加入する保険会社の社内支払基準をいいます。一般に自賠責基準よりは高額となりますが、裁判基準よりは低く抑えられているため、注意が必要です。
3つの基準において、中間といえるでしょう。
裁判基準(弁護士基準ともいいます)とは、裁判による裁定で見込まれる支払基準をいいます。個別の事情について弁護士を交えて厳密に審理していくことから、この基準がもっとも適正な慰謝料額を得られるものといえます。
裁判基準が3つの基準の中で、一番高い基準です。
(3)弁護士が取り扱うことで適用基準が変わる
弁護士に相談することで、一般に慰謝料の額が増える理由は、上述の「裁判基準」が適用されるためです。
慰謝料は精神的損害を埋めるためのものであり、具体的には入院や通院に伴う精神的苦痛、後遺障害による精神的苦痛、死亡による遺族の精神的苦痛などが挙げられます。
裁判となると、これらについて根拠を示してきちんと立証する必要がありますが、これは非専門家にはまず無理なことです。
そこで弁護士に依頼することによって、慰謝料を増額させる方向に働く根拠を提示できるようになるので、慰謝料が増額する傾向にあるのです。
5.交通事故の慰謝料相場はどのくらい?
(1)慰謝料には3種類ある
交通事故によって得られる賠償金には、財産的損害と精神的損害に基づくものがそれぞれあります。
その中で、精神的損害を埋めるものを「慰謝料」といいます。
この慰謝料には主に3種類あり、それぞれ「入通院」「後遺障害」「死亡」を理由とするものです。
それぞれ慰謝料の相場は異なるため、順にみていきましょう。
(2)入通院慰謝料の相場
交通事故によって入院や通院が必要となった場合、治療費や入院費などの実費とは別に、慰謝料を算出します。
これは入院日数や通院日数に一定額を掛け合わせて金額を出します。
自賠責基準を適用すると、1日につき4,200円となるので、これを「治療期間」か「実際に通院した日数を2倍した期間」のいずれか少ないほうと掛け合わせます。
裁判基準を適用すると、日弁連交通事故相談センターのホームページにも掲載されている、通称「青本」と呼ばれる損害賠償額算定基準を参考に算定されます。
この裁判基準によれば、少なく見積もっても自賠責基準の2倍以上は見込めます。
(3)後遺障害慰謝料の相場
交通事故によって首や腰の痛みなどといった後遺症が残ってしまい、それが自賠責機関から後遺障害として「等級」に認定されれば、一定の慰謝料を請求できます。
後遺障害として認定されるには、事故後、目安として6ヵ月経過し、医師から症状が治る見込みがない、つまり症状が固定した状態にあるという診断を受ける必要があります。
等級には、もっとも軽い第14級からもっとも重い第1級まであります。
第14級であれば、自賠責基準で32万円、裁判基準で110万円です。
第1級であれば、自賠責基準で1,100万円、裁判基準で2,800万円です。
自賠責基準と裁判基準とで2倍以上の差があることがわかります。
(4)死亡慰謝料の相場
交通事故によって被害者が亡くなってしまった場合、死亡した本人とその遺族に対しての慰謝料が生じます。
自賠責基準の場合、死亡者本人の慰謝料が350万円、遺族の慰謝料は1人だと550万円、2人だと650万円、3人だと750万円となります。また、遺族が死亡者に扶養されていた場合、別に200万円が加算されることとなります。
他方、裁判基準では本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合わせ、おおよそ2,000万~2,800万円となります。
死亡者本人が一家の稼ぎ頭かどうかなどによって金額に幅が生じます。
やはり自賠責基準と裁判基準とでは、後者のほうが高くなることがわかります。
6.どのタイミングで弁護士に相談すればいいの?
(1)交通事故後の流れ
まず、簡単に交通事故の後の流れをみておきましょう。
- 交通事故現場の捜査・実況見分
- 保険会社への連絡
- 通院・入院、治療
- 症状の固定
- 後遺障害の認定
- 保険会社との示談交渉
- 裁判・和解
状況によって多少の順序は前後しますが、だいたいこのような流れです。
保険会社への連絡や病院を受診するのは速やかに行われるべきですが、症状の固定までは6ヵ月~1年は見込まれます。
その後、後遺障害がある場合はその認定を受け、保険会社との示談交渉を行います。
交渉によって纏まらなかった場合は裁判へ移行することとなりますが、判決まで至らずとも、和解で済む場合も多いです。
(2)弁護士に相談するタイミング
では、1~7のどのタイミングで弁護士に相談するのがよいでしょうか。
結論としては、「事故後、できるだけ早く」となります。遅くとも2ないし3の段階で弁護士に連絡を取っておくといいでしょう。
弁護士に相談する目的は、要するに相手方との交渉を確実に、有利に進めてゆくということにあります。そのためには、交渉の材料となる情報や資料を確保しておかなければなりません。
いつ、どこで、どのような車両と事故を起こしたのか、天気や路面状況はどうだったか、といった外的状況から、身体のどこにどの程度の負傷をしたか、といった肉体的な損害まで、あらゆることが交渉の材料となり得ます。
たとえば負傷の部位や程度であれば、証明のためにどのような診断書を出してもらうのかという問題もありますし、後の後遺障害認定との関係もあるので、その前に弁護士へ相談し、アドバイスをもらうことによって交渉が進めやすくなるわけです。
怪我や病気で病院に行く際は、なるべく早いほうがいいと言われます。
弁護士への相談も同じように、交渉に移るギリギリではなく、その前の材料集めの段階で行っておくことが推奨されます。
7.交通事故の弁護士費用相場はどのくらい?
(1)弁護士の依頼料は様々
交通事故に巻き込まれたとして、いざ弁護士に頼もうとする場合、気になるのが弁護士費用でしょう。
原則として、弁護士は個人事業主であり、依頼料が自由化されています。
そのため、費用は事務所によって様々に異なるのです。
では、費用相場や費用の妥当性を調べる方法はまったくないのでしょうか。
そうとも限りません。
- 弁護士費用の内訳を確認する
- 相見積もりを取ってみる
- 無料相談を活用する
- 日本弁護士連合会(日弁連)の出している「市民のための弁護士報酬ガイド」の確認
といった手段により、相場観を知ることができます。
(2)弁護士費用の内訳
弁護士に依頼した時の費用には、大きく分けて4種類あります。
- 相談料
- 着手金(依頼料)
- 報酬金
- 手数料
相談料とは、相談自体に掛かる費用です。目安としては30分につき5000円ですが、事務所によって増減します。
現在では、初回無料相談の実施をしていたり、交通事故に関する相談は無料だったりという事務所も多いので、ホームページや電話などで確認してみるといいでしょう。
着手金ないし依頼料とは、本格的にその弁護士に依頼すると決まった場合に支払うこととなる費用です。裁判の勝ち負けを問わず掛かり、実費を含む場合もあれば別々に請求される場合もあるので、確認しておきましょう。
これも交通事故においては無料とする事務所が増えてきています。
報酬金は、回収した賠償金などの中の一定割合に、一定の金額をプラスする形で支払うこととなる費用です。この報酬金をメインとする事務所の場合、予め支払わなければならない金額が低く抑えられるというメリットがあります。
手数料は、書類作成費用などのほぼ単発で終わる事務作業などに関する費用です。また、他には実費として交通費や通信費、コピー代、収入印紙代が掛かることもあります。
(3)相見積もり・無料相談
明確な相場がない以上、弁護士費用を安く抑えようとするなら相見積もりや無料相談といった方法を活用するのもいいでしょう。
特に無料相談は、一般の方々が弁護士に依頼する際の心理的・経済的なハードルを下げるために様々な事務所が実施しています。そこで問題解決までの流れや具体的な費用の見積もりも相談できるので、調べてみることをお勧めします。
ただ、交通事故という問題の性質上、なかなか相見積もりを取る時間も機会もないということは考えられます。
そのような時には、上述した「市民のための弁護士報酬ガイド」によっておおよその相場を確認することができます。
(4)弁護士の費用相場について
「市民のための弁護士報酬ガイド」によれば、以下のようなモデルケースが示されています。
交通事故において損害賠償を請求する際に、
- 相手方の保険会社から500万円の提示を受けた
- 弁護士に相談したところ、1,000万円が相場と見込まれた
- 依頼して訴訟したところ、1,000万円を賠償金として回収できた
このようなケースの場合に弁護士に「いくらくらいの費用を取りますか?」とアンケートを取ったところ、
- 着手金
・・・30万円(49%)
・・・20万円(20%) - 報酬金
・・・50万円(35%)
・・・70万円(18%)
※()内は回答割合
という回答が弁護士たちから寄せられています。
つまり、自分だけの力では保険会社の提示してきた500万円のみを回収できたであろうところ、弁護士に依頼することで1,000万円回収できたというわけですね。
それに掛かる費用が、着手金と報酬金を合わせてだいたい70万~100万円。
もちろん、単純な金額だけの問題ではなく、示談交渉などに煩わされる負担も大幅に軽減できるという利点があります。
8.できるだけ安く済ませる方法はある?
(1)弁護士費用を安く抑えるには
交通事故によって後遺障害などが残ると、以後の就業などにも影響が出て、収入が下がってしまうことも考えられます。
そうでなくとも、いろいろな手続や交渉などに時間を割かれ、この先どれだけの出費を強いられるのかがわからない状況であれば、なるべく弁護士費用も安く抑えたいところでしょう。
弁護士費用を安くあげる方法には、大きく分けて2つあります。
制度や仕組みを利用する方法と、それ以外の方法です。
(2)制度・仕組みを利用して安くする
①相談料・着手金などの無料サービス
相見積もりなどとも関係しますが、弁護士事務所によっては初回の相談料や着手金を取らないところもあります。
相談だけでも、30分につき5,000円(税別)程度は掛かるのが一般的ですので、少しでも安くしたい場合は、弁護士事務所へ足を運ぶ前に調べてみるといいでしょう。
②弁護士費用建て替え制度(法テラス)
法テラスでは、もっぱら交通事故に関する大まかな相談(無料)や、適切な弁護士の紹介を行っています。
また、持ち合わせが少なく弁護士に依頼できないという方に対しては、弁護士費用の一時的な建て替え制度もあります。
厳密には費用を安くする方法とは異なりますが、少なくとも弁護士に依頼できないことによる損失は防ぐことができます。
③日弁連交通事故相談センター・交通事故紛争処理センター
日弁連交通事故相談センターは、日弁連の設立した財団法人であり、交通事故を専門に扱う弁護士が保険会社との示談の斡旋などを行ってくれます。
また交通事故紛争処理センターも、保険会社との示談斡旋や調停などを行ってくれます。
どちらも弁護士に依頼せずに示談などの手続きを進めることが可能なので、安く済ませられる場合もあります。
ただ、保険会社の側には示談に応じる義務があるわけではないため、纏まらないときには弁護士に依頼することとなるでしょう。
④弁護士費用特約
詳しくは後述しますが、任意保険のオプションとして弁護士費用特約という仕組みがあります。
相談料、弁護士費用に関して、一定の限度はありますが、自らの自動車保険を用いてカバーできるというものです。
(3)それ以外の方法で安くする
①近場の弁護士事務所への依頼
交通事故の場合、自宅から遠く離れたところで巻き込まれることもあります。
そのようなときには、自宅・事故現場・相手方の住所地との兼ね合いで、どこの裁判所が管轄するかを決めます。
弁護士事務所も、もちろん交通事故専門の弁護士がいるところに依頼したいものですが、やはり自宅か事故現場に近いところの事務所を優先的に検討するといいでしょう。
弁護士に依頼する場合、交通費や通信費などは実費として掛かります。多くの場合、これらの費用は無料とはなりません。
つまり、遠くの事務所に依頼すると交通費などが高くなるわけです。まずは近場に依頼するのに適した弁護士事務所がないかどうかを探してみましょう。
②加害者側への弁護士費用の一部の請求
交通事故においては、原則として加害者側に弁護士費用を請求することはできません。
ただ、例外として訴訟になった場合は、認容された賠償額の10%程度を弁護士費用として請求することが可能です。
なお、裁判外で示談に応じた場合、このような弁護士費用の上乗せが認められることはないので、注意が必要です。
9.弁護士費用特約はどのように利用すれば良い?
(1)弁護士費用特約とは
上でも簡単に触れましたが、弁護士費用特約とは任意保険に付帯するオプションであり、弁護士費用なら300万円、法律相談費用なら10万円をそれぞれ限度として、保険金が支払われるという特約をいいます。
弁護士費用は案件の難易度や請求金額などによっても変わってきますが、一般の交通事故で300万円を超えるようなことはほとんどないので、弁護士費用特約を結んでおけば費用の心配はいらないといえるでしょう。
(2)弁護士費用特約の利用の仕方
まず、任意保険加入時に弁護士費用特約も選択しておく必要があります。これによって生じる保険料の値上がりは、年間にして1,500円前後です。
交通事故に遭った場合、保険会社に連絡し、弁護士費用特約に基づく支払いを受けたいとの旨を担当者に伝えましょう。除外事由に当たらない場合、特約を利用できます。
(3)弁護士費用特約を使えないケース
交通事故であれば、ほとんどの場合に弁護士費用特約は使えますが、中には例外もあります。
たとえば、無免許運転や飲酒運転など、被保険者の側に重大な過失がある場合や、被保険者の家族といった身内に対する請求の場合、一部の自然災害などによる事故の場合が挙げられます。
弁護士費用特約でカバーされる範囲がどこからどこまでなのかは、保険契約を結ぶ際にきちんと確認しておくようにしましょう。
10.弁護士に相談するとどのような流れで進むの?
(1)事故の発生から示談まで
弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほどいい、と上でご説明しました。多くの場合、弁護士に相談するのは通院や入院をして治療を受けるタイミングです。
すなわち、事故後に弁護士へ相談してからの流れは以下のようになるでしょう。
- 通院・入院、治療
- 症状の固定
- 後遺障害の認定
- 保険会社との示談交渉
- 裁判・和解
以下、それぞれの段階のポイントについてみていきます。
(2)治療から後遺障害の認定まで
病院できちんと治療を受けるというのは、後に治療費や慰謝料の請求とも関わってくるため、診断書という形でしっかりと証拠を残しておくようにしましょう。
検査も受け、治療の経過がどのようであったか、どのくらいの日数通院したのかという点も示せるようにしておく必要があります。
治療を続けて、半年から1年ほど経過しても完治に至らず、それ以上の回復が見込めない状態となることを「症状固定」といいます。この症状固定までが、治療費として請求可能とされています。
つまり、症状固定といえるかどうかは、治療費の請求の可否に関わる問題なのです。
後遺症が残り、それが自賠責機関によって「等級」認定されれば、後遺障害として治療費とは別に損害賠償請求を行えます。
等級認定には保険会社が手続きを行う事前認定と、被害者側で手続きを行う被害者請求とがあります。
一般に被害者請求のほうが認定される等級は高くなるため、弁護士のサポートが重要となるといえるでしょう。
(3)示談交渉と裁判・和解
後遺障害の等級認定まで済めば、今度はそれらを基に相手方の保険会社との示談交渉を進めていくことになります。
保険会社は低めの基準である(任意)保険基準に基づいた損害賠償額を提示してきますが、弁護士が交渉することで、より高い裁判基準に基づく損害賠償額の請求が可能となるのです。
示談交渉によって話が纏まらなければ、民事訴訟を提起することになります。大抵は判決まで至らず、和解して早めの解決を目指すでしょう。
裁判の局面でも弁護士による主張・立証が行われることで、より高額の賠償金を得られる傾向にあります。
以上が弁護士に相談した場合の解決までの流れです。
自分一人で交渉しようとするよりは労力や掛かる時間が少なく、認められる賠償金の額も高くなるといえるでしょう。
11.後遺障害認定も弁護士は力になってくれる?
(1)後遺障害認定こそ弁護士の力が発揮される
上述のように、後遺障害認定には事前認定と被害者請求とがあり、被害者請求のほうが高い等級の認められる傾向にあります。
それは、相手方の保険会社が手続きを進める事前認定と比べて、自分で手続きを行う被害者請求の場合、自分に有利な資料を添付できるからです。
しかし、一般に後遺障害認定の手続きに慣れているという方はほとんどいないでしょう。
そこで専門家である弁護士に任せることにより、資料の収集から等級認定の請求まで滞りなく進めることができるのです。
後遺障害が出てしまっている時点で、一定の身体的な不調は生じています。せめて不便をカバーするための賠償金は得るべきといえましょう。
(2)弁護士による後遺障害認定の請求のメリット
まず、後遺障害がはっきりと表れている場合は認定も容易となりますが、あまり明確でない場合は、積極的に主張して認めてもらう必要があります。
このようなとき、弁護士は後遺障害の等級認定に要する適切な資料を収集し、纏めて提出することができます。
次に、既往症、すなわち事故前に存在し、治っていた症状があった場合、事故と障害との因果関係が不明確となります。
交通事故によらない障害であれば、損害賠償の対象とならないからです。こうしたケースでも弁護士による請求なら、他ならぬ今回の事故によって生じた後遺障害であるということをきちんと示してくれますので、適切な等級が認定されるのです。
さらに、必要書類にとどまらず、等級認定を有利に運ぶ資料も弁護士なら集めることができるので、被害者が自らあれこれ調べて動くという労も要りません。
加えて、弁護士によることの大きなメリットが、もう一つあります。
(3)保険会社との交渉
弁護士は行政書士や司法書士などと異なり、業務として相手方と交渉する権限を有しています。
つまり、後遺障害の等級認定を受けた後、相手の保険会社との交渉も任せることができるのです。
そして、自分だけで保険会社と交渉するより、弁護士が付いたほうが賠償額の大幅な増額が見込めます。
このように、後遺障害認定からその後の交渉に至るまでも、弁護士は強力にサポートしてくれるのです。
12.交通事故に強い弁護士はどうやって探すの?
(1)交通事故を専門に扱っている弁護士の探し方
弁護士といえども、膨大にある法的分野の全てに通暁しているわけではありません。それまで取り扱ってきた事件の種類などによって、得意分野とそうでもない分野とがあるのです。
ある特定の分野に強い弁護士の探し方は、ちょうど医者の探し方と似ています。
ホームページなどで情報を収集してみましょう。どういう事件を扱ってきて、何を専門としているのかが記載されているところも多いはずです。
経験年数や実績、場合によっては著書や論文が記されているところもあります。
そこであまりにも専門分野が多く並べ立てられている弁護士や、誇大広告に近い表現が用いられているような弁護士、登録してから日の浅い弁護士は避けたほうがいいでしょう。
経験がそれなりにあり、交通事故に関する専門書を著しているなどの経歴を持っている弁護士ならば、専門的なキャリアを有していると判断していいです。
(2)紹介を受ける
また、知人や専門施設から紹介してもらうという手もあります。特に、法テラスや日弁連交通事故相談センター、交通紛争処理センターでは交通事故を専門的に扱っている弁護士を紹介してくれるため、相談してみるのもよいでしょう。
交通事故に巻き込まれた場合、気が動転してしまったり、後遺症や後遺障害に苦しめられたりして、冷静な判断ができなくなることもあります。ですが、示談交渉を終えるまでは取り返しが付きます。
自分で全てを取り仕切り、交渉や請求手続きを行うのが心配だという方は、以下のような法律事務所に一度ご相談されるとよいでしょう。