交通事故弁護士JP

慰謝料増額や示談交渉など弁護士の役割を分かりやすく解説

交通事故に遭った際に弁護士に相談すべき適切なタイミングとは?

結論から申しますと、交通事故後に弁護士へ相談するのであれば、できるだけ早ければ早いほうがいいです。

しかし、現実にはなかなかそのようには行かないものでしょう。事故の被害に遭ったことによる肉体的・精神的な動揺もありますし、とっさに弁護士へ相談するという選択肢が出てこなかったということもあるはずです。さらに、弁護士の存在は頭に浮かんでいても、

「なんだか怖い」
「メリットがよくわからない」
「高額の費用が取られるんじゃないか」
「今更相談しても遅いのでは……」

などといった不安が、連絡をためらわせるかも知れません。

そこで今回は、交通事故の発生後の節目ごとで弁護士がどのように役立つのか、なぜ弁護士に相談したほうがいいのか、費用面での心配はしなくていいのか、といった点について解説をしていきます。

1.交通事故後、弁護士に相談するタイミングとは

(1)事故後の流れと節目

交通事故が起きると、治療や示談、場合によっては裁判まで至り、終局的な解決を迎えます。
ただ、加害者とのやり取りをする中で、交渉を有利に進めるために重要なポイントがいくつかあります。それが節目です。

事件後の流れを節目の観点から整理すると、以下のようになります。

  1. 事故直後の時点
  2. 治療中の時点
  3. 治療終了時点(症状固定時)
  4. 後遺障害認定時点
  5. 示談交渉開始時点
  6. 示談書作成時点
  7. 裁判時点(示談不成立)

状況次第で順序は多少変わることもありますが、このような流れとなります。弁護士に相談するタイミングとして候補に挙がるのも、この7つの時点であり、どの時点でも遅過ぎる、早過ぎるということはありません。

(2)依頼タイミングが早ければ弁護士費用も高くなる?

気になるのが、一般に専門家を拘束する時間が長ければ長いほど、料金も高くなるという事実です。だとすると、7.の裁判時点で依頼したほうが、1.の事故直後の時点で依頼するよりも出費を安く抑えられるのではないでしょうか?

これについては、弁護士の報酬体系を簡単に理解する必要があります。

弁護士費用の内訳としては、「相談料」「着手金」「日当」「実費」「成功報酬」の5種類があります。中には相談料が無料だったり、成功報酬が日当とまとめられていたりすることもありますが、考えられる費用はこのうちに含まれます。

この中で着手金や相談料、成功報酬は、依頼タイミングの早い遅いで金額が変わるものではありません。問題は日当と実費ですが、これは依頼期間が長いほど増えていきます。

しかし、次の点は意識しておくべきです。

  • 早めに依頼することで交渉が速やかにまとまり、結果的に短期間で解決することがある
  • 弁護士に交渉してもらうことで得られる賠償金が増え、依頼料をカバーできることがある
  • 弁護士費用特約によって、そもそも費用が掛からないこともある

個別具体的な事案にもよりますが、早めに依頼すれば高くなるとは限らず、むしろ依頼が遅いほうが高くつく場合もあることに注意が必要です。

2.事故の重大性と弁護士への相談タイミング

さて、1.~7.のどのタイミングで弁護士に相談するのがよいでしょうか。ここでは事故の程度や態様との関係で、適切な相談タイミングを検討してみましょう。

(1)軽微な事故

まず、軽い接触程度の事故や被害がちょっとした打撲くらいのケースでは、弁護士への依頼をあまり急がなくともいいでしょう。3.~5.の時点までに弁護士へ話を通しておけば足ります。日当や実費がかさんで、得られる賠償金よりも依頼料などの出費のほうが多くなる可能性があるためです。

(2)重大な事故

それに対し、傷害の程度が深刻で、車も酷く壊れてしまった重大事故のケースでは、事故後、できるだけ早く弁護士に連絡を取るべきです。1.か、遅くとも2.の段階で知らせておくといいでしょう。

弁護士に相談する目的は、相手方との示談交渉を確実かつ有利に進めることですから、交渉の材料となる情報や資料を確保しておく必要があります

事故の時間や場所、自分と相手の車両、天気や路面状況といった外的状況から、身体のどこにどの程度の負傷をしたかといった「身体的損害」まで、あらゆる情報を資料として残しておかなければなりません。後に行われる「後遺障害認定」との関係上も、早めに弁護士へ相談してアドバイスをもらうことで、交渉が進めやすくなるのです。

後遺障害(等級)認定とは、交通事故を原因とした労働能力の低下や喪失(後遺障害)を、自賠責法に定められた等級のうちのいずれかとして認定することです。この認定は、損害保険料率算出機構という団体が行っています。

参考:損害保険料率算出機構

(3)後遺障害が不明な場合

交通事故によるケガは治っても後遺障害が残る場合は、それに対する逸失利益や慰謝料を請求できます。
なお、交通事故における逸失利益とは、その事故がなければ失わなかったはずの利益のことです。

しかし、症状はあるものの後遺障害に該当するかどうかが不明な場合、あるいは後遺障害自体には該当しそうでも、等級が不明な場合があります。
この等級とは、自賠責法に定められている、後遺障害の種類や程度の分類です。もっとも重い第1級から順に第14級まで規定されています。

いずれも3.の前、つまり症状固定(それ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状態)の前に弁護士にアドバイスをもらい、症状に沿った等級認定を受けられるようにするのがよいでしょう。

3.弁護士費用特約と相談のタイミング

費用を問題視して弁護士への相談を見合わせているのであれば、自らが加入している保険に「弁護士費用特約」が付いていないかどうかも確認しておきましょう。もし特約が利用できるのなら、少なくとも弁護士費用の問題は気にしなくてよくなります。

(1)弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、任意保険に付けられるオプション契約であり、設定された限度額まで弁護士費用や法律相談費用を保険会社が負担してくれる特約のことです。多くは、弁護士費用につき300万円、法律相談費用につき10万円を限度とする特約となっています。

よほど交通事故の程度が大規模で重大か、後遺障害などで争いがある場合でなければ、弁護士費用が300万円を超えるようなことはほぼないため、実質的に自分の持ち出しは不要で弁護士のサポートを受けることができます。

(2)保険会社の対応

保険会社は、事故の被害者による弁護士費用特約の利用をあまり勧めないこともあります。「弁護士を付けるまでもないケースですよ」などと言われると不安になり、弁護士へ依頼する必要もないかと考え直してしまうかも知れません。

しかし、些細な事故でも弁護士を介することで有利に働くケースはあります。むしろ軽微な事故ほど、特約なしで弁護士に依頼すると費用倒れとなるリスクがあるため、弁護士費用特約が活きるのです。保険会社の対応がどうあれ、特約が利用できるなら積極的に使っていくべきです。

(3)相談のタイミング

基本的に、自分の弁護士が介入することで事態が悪化したり問題が生じたりすることは考え難いものです。弁護士費用特約が使えるとわかった時点ですぐに保険会社と弁護士への連絡をし、弁護士に依頼しておきましょう。

4.事故後の各時点での弁護士に相談するメリット

上で、交通事故の発生から裁判までの流れを1.~7.までの段階に分けましたが、それぞれの時点で弁護士に相談するメリットは変わります。よりスムーズに、できるだけ賠償額を多く、という解決を目指すのはどの時点でも変わりませんが、そのために取る戦術が異なってくるのです。

(1)事故直後の時点

事故直後は、後の示談交渉を見据えた時に必要な証拠がたくさん残っています。たとえば壊れた車両や身体に負ったケガなどです。それらを写真などに残しておくことで、診断書を取りやすくなる、事故や負傷の程度をしめしやすくなる、といったメリットが生まれます。

(2)治療中の時点~4.後遺障害認定時点

治療費や通院費、それらに関する慰謝料は、治療期間の長さや実際に通院した回数を基に算定されます。弁護士に依頼することで、通院頻度や診断書に関するアドバイスをもらえますし、保険会社が治療の打ち切りを求めてきたような場合でも代わりに交渉してくれます。

特に、後遺障害認定に関して症状固定のタイミングをどうするか、どのように医師から後遺障害診断書を出してもらうか、後遺障害の等級認定をどう適切に行なってもらうか、といった点は、治療費を含む賠償金や後遺障害慰謝料の額とも直接的に関連する重要な問題です。

交通事故案件を数多く手掛けてきている弁護士であれば、後遺障害の等級認定に関する手続きについても様々なケースを経験していることでしょう。的確な助言を受けることで、望ましい形で後遺障害認定も受けられる可能性が高くなります。

(3)示談交渉開始時点~6.示談書作成時点

示談交渉の相手方は、加害者側の保険会社の示談交渉担当者であることがほとんどです。交通事故に関する知識や法律の知識がないと、交渉経験の豊富な保険会社にとって有利に話が進んでいき、賠償額等の算定基準のうちでも低めの「任意保険基準」というものが用いられてしまいます。

弁護士に示談交渉を委任することで、「弁護士基準」という判例を踏まえた算定基準を基礎とできるため、賠償金が増額される可能性が高くなります。また、示談を代行してもらえることによる心理的負担の軽減も、交通事故の被害者にとっては少なくないメリットです。

(4)裁判時点

裁判の時点までもつれこんでしまうと、今更弁護士に相談しても手遅れなのではないか、と考える方もいるかも知れません。

しかし、法的立論と立証こそが何よりも重視される法廷の場こそ、弁護士が最大限の真価を発揮するところだともいえます。裁判では加害者側も弁護士を立ててくるので、自分ひとりだけで争おうとするのは非常に困難です。

弁護士のサポートを受けることで、少しでも望ましい賠償金を獲得できるでしょう。

まとめ

病気にかかったら、早めに医者の診察を受けたほうがいいといわれます。交通事故に遭ったときに弁護士へ相談するのも、それと同様に早いほうがいいものです。

示談や裁判の際に証拠できるような資料を確保しておくことで交渉を有利に進められますし、後遺障害等級認定への助言や賠償額算定時の弁護士基準の採用など、弁護士がいるからこそ受けられるサポートというものがあるのです。

基本的に、交通事故後に弁護士への相談をするのに遅過ぎるということは、あまりありません。相談だけなら無料という弁護士事務所も多くあるので、一度相談されることをお勧めします。

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